この話は、僕がブラック企業に入社して1年が経とうとしていたときに起きた、顧客のシステムを壊してしまった話です。
トラブルが起きた案件の詳細
お客さんについて
お客は、東京は新宿に本社を置く不動産会社。
社長と5人の社員がいる。
システムについて
この不動産会社が使っているシステムは、物件管理システム。
不動産会社が管理している物件の情報をWEBブラウザで編集できるようになっている。
物件の情報とは、物件の住所から金額、そして成約されたかどうかまで様々。
上記に加えて、不動産会社が運営しているホームページに物件の内覧動画を表示するかどうか選択できる機能がある。
この案件でやること
この案件では、物件管理システムで管理している、ホームページに内覧動画を表示するかどうかの条件を一つ増やすことを目的とする。
今までは、内覧動画をホームページに表示するか、しないかの選択しかできなかった。
物件が購入されて成約状態になった段階で、ボームページに表示しなくなる。
それを、成約状態になっても、購入者にホームページに動画を残してもよいか確認して、OKだった場合に、表示したままにする。
要するに以下のような状態にする。
購入者許可 | 購入者拒否 | |
成約 | HP表示OK | HP表示NG |
未成約 | HP表示OK | HP表示OK |
ホームページに動画を表示するかしないかを改修する、簡単な案件だった。。。そのはずだった。
要件定義に出発
システム開発の一番最初は要件定義から始まる。お客さんの要件をまとめる作業だ。
もともと、この案件は50歳の超ベテラン社員がやる予定だったのだが、うつ病で仕事に来れなくなってしまい、なぜか1年目の僕が担当することになった。
ブラック企業であるうちの会社の社長と僕で、不動産会社に伺う。
不動産会社側の担当はK氏。50歳のベテラン営業だ。
要件定義はいいムードで始まり、はやくも僕とK氏は仲良くなった。
「実はシステムに不調があって、ここ直して欲しいんだ」
K氏はついでとばかりに今回のシステム改修とは関係ない、細かい要望を伝えてきた。
不動産会社とは月額契約でシステムの運用保守を請け負っているので、対応しなければならない。
と言っても、本当に些細な内容で、特に時間がかかるような作業でもないので、それらの要望を快く受けた。
僕「すぐにできますし、今回の改修とまとめて修正することもできますが、いかがしますか?」
K氏「すぐにできるなら、先にやっといて欲しいな」
それから要件定義をうまくまとめて、今回の改修内容を紙に書き出し、うちの社長、K氏にしっかり確認をとり解散した。
社内に戻り、K氏の細かい要望を全て修正して、アップロードした。
電話でK氏に修正内容が問題ないかどうかを確認し、その日は終わった。
1年目の人間にしては全てが順調だった。
改修完了!
順調だった。メインの案件の改修も完了した。
最後の仕上げにデータベースを直接触る。
不動産会社が管理している物件データ全ての情報を一気に書き換えるのだ。
一つ間違えると、データの整合性が合わず、ホームページからも、物件管理システムからも、物件のデータが表示されないようになる。繊細な作業だ。
しっかりデータベースのバックアップを取った。
僕はうちの会社の社長とK氏に確認をとった。これから変更してもよいかどうかの確認だ。
問題ないとのことなので始めた。1秒もかからず終わる。データベースは直接触った方が速い。
また確認した。社長もK氏も問題ないと言ってくれた。社長に至っては真横で一緒に確認した。
これで終わりのはずだった。
でも終わらなかった。
K氏「問題ないです。ありがとう。」
K氏「ところで荒木さん、ここがおかしいんだけどどう言うこと?」
え?
要件定義の時に聞いた細かい要望の箇所だった。
僕「いやそこはKさんのおっしゃった箇所で…」
K氏「っあ、こっちの社長に変わるね」
不動産会社の社長「おい!テメェコラ!どう言うことだ!社長と変われ!!!」
ひっ!
うちの会社の社長に電話を渡しました。
社長「はいっ、はいっ、申し訳ございません!はい!」
ガチャ…。
社長「テメェ何してくれたんだ…!」
僕「あの、言われた通りのことを…」
社長「言い訳してんじゃねぇ!!!」
意味がわからなかった。
あとで聞いた話、K氏はいい加減なことを言う人で、思いついたことをすぐ口に出す人。真面目な見た目と性格と、年長ということで、周りは言葉通りに反応してしまい、度々混乱を引き起こす人物だったみたい。
今回のトラブルもK氏のせいだった。しかし今回はシステムまで影響していたので、事態が深刻だった。
その日は徹夜した。怒鳴られながら、罵声を浴びながら修正した。全て自分のせいだと言われた。
翌朝、不動産会社に行って謝りに行った。
その日の晩も怒られた。出向している社員まで戻ってきて怒られた。
ものすごくヘコんだ。何も悪いところはないのに一人で反省点を探した。
サイトがぶっ壊れた
ようやく落ち着いてきたかなと感じた2週間ぐらいたったある日、K氏から電話がきた。
K氏「荒木さん、なんかおかしいんだけど、成約してない物件が成約してたり、逆もあったりで」
え?
K氏「っあ、こっちの社長に変わるね」
不動産会社の社長「おい!テメェコラ!どう言うことだ!社長と変われ!!!」
同じパターンだ…。
社長「はいっ、はいっ、申し訳ございません!はい!」
ガチャ…。
社長「お前、大変なことをしでかしてくれたな…..」
社長「俺はもう知らねぇからな。自分でなんとかしろ。夜になったら出向している社員戻ってくるから勝手に怒られてろ」
ええええ…。
何が起きたかというと、不動産会社の物件データの成約されたかどうかの情報がめちゃくちゃになった。
どれが売れて、どれが売れていないかわからなくなってしまったのだ。
パニック
過呼吸気味になりながら、直す方法を探した。
バックアップは2週間前。2週間通常業務で物件のデータは様々な編集がされている。
新人の僕には元に戻す方法がわからなかった。
何度もプログラムを書いた。でも無理だった。
静かな社内の空気。みんなが「俺知〜らねっ」という感じだった。
時間が経つごとに呼吸が荒くなった。書いてるプログラムもめちゃくちゃだった。
夜になって、出向している社員がやってきた。説教の時間が始まった。
人格まで否定された。
社員「親がダメなんだろうな。親が」
めちゃくちゃなプログラムを見てバカにされた。
社員「ほら、手伝ってやるから自分でどうするか考えろよw」
頭を掻きむしった。必死で頭を掻きむしった。
「コタエ…ワカラナイ」ずっと呟いた。
社長「社員さん、ちょっと休憩にしましょうか」
社員「え?なんだこれからのところなのに…」
社長「いいからw」
僕はベランダに出て、外の空気を吸うことにした。土砂降りの雨で、ベランダに屋根があるにもかかわらず、濡れた。でもどうでもよかった。
社長もベランダに来た。
社長「辛いだろ」
社長「…みんなな、通ってくるんだ」
憎くて憎くて仕方がなかった。
全部こいつが悪いのに。
休憩が終わり、社長がみんなを集めて話し出した。
社長「みんなまとまってないから、何があったかを説明しようと思う」
そこから社長は有る事無い事話し出した。全部僕が悪いという話だった。
社長「…これを踏まえて、社員みんなで新人に仕事振りを見せてあげてほしい」
社長「いいか、荒木、お前は無力なんだ。勉強させてもらえ」
状況は変わらなかった。いや、変わったのか。
社員「僕はこれから何をしようとしてるでしょうか!荒木くん!」
僕「…。」
社員「そんなことも分かんないの?ダメすぎるでしょw」
夜中3時回った頃、ようやく修正方法の方針が決まった。
作業が始まるとき
社長「荒木もう帰れ」
僕「え、最後までやります」
社長「今見たってどうせ覚えらんねーだろ。タクシー領収書とっとけよ」
雨の中、徒歩で2時間かけて帰った。
何が間違ってたのか考えながら。答えなんかないのに。
終わりに
この次の日は金曜日でした。しっかり遅刻せず出社して、定時に帰ろうとした時、先日の状況を見てた経理のおばちゃんとこんなやりとりがありました。
「土日は何するの?」
僕はこう答えました。
「jQueryの入門書買ったので、色々遊んでみようと思ってます」(真顔)
「荒木くん大丈夫!?無理しなくていいからね!?ね!」
「?」
今思うとキチガイですよ。でも当時は真剣でした。
プログラミングが面白すぎて、辛いとか考えていませんでした。
よく3年間耐えたなぁ…。この頃のプログラミングは本当に楽しかったなぁ…。
後日、K氏の人間性について、社長や社員に教えてもらいましたが、彼らから謝罪の言葉はありませんでした。
「あの人ああいう人だからwどんまいw」でおしまい。
はぁ…。
この経験からわかったことは、自分を守るのは自分だけということです。
基本的に客は敵。もしかすると社員も敵かもしれない。
ボイスレコーダーは持ち歩きましょう。
重要なやりとりは、メールで。もし会話で行ってしまった場合、書類を作成して、話した内容はこれでいいですよね?とお互いに確認し合いましょう。
以上、ここまでご覧いただきありがとうございました。
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